私が小学校の頃、学校にはパソコン室があり、中にはWindows95のパソコンが並んでいた。昼休みにはみんなインターネットでブラウザゲームをプレイしたり、FLASHムービーをみたり、Hoverをプレイしたり各々好きなことをして楽しんでいた。
そしてパソコン室の全てのPCにはイージートゥーンというソフトがインストールされていた。
イージートゥーンというのは、白と黒だけを使ってパラパラ漫画が作れるというソフトだ。これも人気の遊びであり、私も昼休みを使って200ページ近く使った棒人間が大冒険する大作動画を作ったのだが、ある日見るといつの間にか2ページの動画に上書き保存されており、ショックを受けたものだ。
そんなイージートゥーンであったが、その人気度からか委員会(?)によってあるイベントが開かれた。イージートゥーンで作られたアニメで優秀な作品を決めるというコンテストだった。
私は参加しなかったのだが、親友がこのコンテストに参加した。その親友はいつも学校で絵を描いており、しかも私が今思いだしても笑える漫画を生み出すユーモアを持っている素晴らしい人物だ。余談だが彼は東大に入学し、卒業したようだ。
そんな楽しい彼がイージートゥーンで動画を作る様を私と友人数人は横で眺めていた。ボールマウスしか使えないというのにとても上手く描いていた。今でも鮮明に思い出せる。
肝心の内容であるが、いわゆるアンパンマンパロである。アンパンマンとバイキンマンが対峙している場面から物語は始まり、「今日こそやっつけてやるぞ」とアンパンマン。しかしなぜか自信満々のバイキンマン。「そう簡単にいくかな」とつぶやくと、なんとバイキンマンが変身する。1コマ1コマの間にみるみるうちにマッチョになっていくバイキンマン。このシーンは10年経った今でも脳裏に焼き付いている。焦るアンパンマン。そして次のカットではアンパンマンの視点に。「くらえ!」というセリフとともに画面に向かってくるバイキンマンの鉄拳。その次のコマでは上から液体が垂れてきて画面は真っ黒になるのだ。
「口ほどにもない」なとバイキンマン。するとバイキンマンはアンパンマンの顔が落ちていることに気がつく。なんとなくそれを拾い上げるバイキンマン。するとアンパンマンの顔はゆっくりバイキンマンの方を向き、ゆっくりと口が開かれ、そこからビームが放たれて画面はビームに覆い尽くされる。終劇。
なんという大作。ちなみにこれらは授業でパソコンを触る時間などは含まれて居ない。昼休みに通いつめて出来たものなのだ。他の人の作品を横目にみたが、とてもこのレベルに追いつける作品はなかったように記憶している。というか、彼の作品のインパクトがデカすぎる。
そしてこの大作を評価してもらうために委員会の生徒に視聴して貰ったのだ。再生が開始される。笑いながら見る私。そして動画を最後まで視聴した委員会の生徒は、驚くべき言葉を口にしたのだ。彼はバイキンマンの鉄拳が飛んできて黒い液体が画面を覆うシーンを見てこう言った。
「血はダメだよ!」
なんという倫理観。これが規制だらけの作品を見て育った子供なのか。(私達もだが)なんてジョークの通じない子供だったのだろうか。というか過激な描写が禁止なら先に言えよ。
しかし流石は天才の親友。この言葉を聞いて即こう言った。
「血じゃないよ!アンコだよ!」
なんたる正論。アンパンマン本編においても出血しているところは確かにみたことがない。どう考えてもアンコだ。彼の言葉に私が感動していると、委員会の子供も即座にこう返したのだ。
「アンコもダメ!」
なんたる理不尽。なんたる権力者からの圧力。なんたるああ言えばこう言う。こうして彼の作品は我々以外の目に触れることなく、闇に葬られたのだった。ちなみに他はグダグダで、結局優勝者はでなかったような記憶がある。本当にひどい。理不尽。そんな小学校時代。未だにあの委員会の子供の判断には腑に落ちない私である。
参考画像「ロン!リーチメンホンヤクヤク裏7!」(メインで遊んでたのはちゃんと4人麻雀でした)
参考画像「走る生活空間」